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階層社会学が教える「できない上司」が増えるワケ

《本記事の概要》ローレンス・J・ピーター&レイモンド・ハル著 ピーターの法則という本をご紹介します.あなたの職場にも”できない上司”,いませんか?階層社会で働く誰もが昇進を繰り返すと”無能”へ辿り着く・・・そんな法則があるなんて.悲しいけどこれが現実なのです.

 


ピーターの法則

職場の若手が抱える悩み

企業にお勤めの方であれば,「正直,この人仕事できないな〜」と思ってしまう先輩・上司が一人や二人いるのではないでしょうか?「うちの会社にはそんな人いない」という意見を私は聞いたことがありません.学生時代の同期と話していても,「うちにも居るわ〜」という声ばかりです.

 

「隣の部署の◯◯部長が・・・」と他所の部署の話なら,自分への影響が小さくてまだマシかもしれませんが,その隣の部署に所属する社員の中には,「部長が使えなさすぎてイライラする!」などと思っている人もいるかもしれません.上司と部下は評価者と被評価者という利害関係でもあり,上司が(仕事できなくて)嫌いでも,だからと言って無視するわけにもいかず,”大人の付き合い”をしなければなりません.

 

こんな風に,日本全国のあらゆる企業に勤める若手会社員が,不甲斐ない,あるいは無駄だと思う”大人の付き合い”に悩まされているのではないでしょうか.

ピーターの法則

階層社会では,すべての人は昇進を重ね,おのおのの無能レベルに到達する.
ローレンス・J・ピーター&レイモンド・ハル著 ピーターの法則より

会社という組織には,社長,副社長,部長,課長,係長・・・などといくつかの役職がありますよね.ほとんど全ての会社という組織において,このような役職が存在します.
著者の一人であるピーター博士が提唱した”ピーターの法則”は,こういった組織においては昇進というイベントがあり,昇進を重ねていくことで,その人の無能レベルにいずれ到達してしまうというものです.

 

例えば,自動車修理の技術者としては”優秀な社員”が,技術者を監督するマネージャーに昇進した途端,マネジメントスキルが全くなかったために,優秀な社員から一転,”できない社員”の烙印を押されてしまうという事態に陥ります.どんな業界でも似たような話があるかと思います.

 

昇進=給与アップという認識があるため,昇進をひとつの目標として仕事をしている人もいらっしゃるでしょう.昇進なんて興味ない!という人でも,ある年齢に達すれば嫌でも昇進させられる・・・ほとんどの日本企業がそんな状況ではないでしょうか.

 

このピーターの法則こそがまさに,職場の若手社員を悩ませる”できない上司”が出来上がるワケということです.

 

ピーターの必然

やがて,あらゆるポストは,職責を果たせない無能な人間によて占められる.
(中略)仕事は,まだ無能レベルに達していない人間によって行われている.
ローレンス・J・ピーター&レイモンド・ハル著 ピーターの法則より

世の中の会社のあらゆるポストが無能な人間で溢れかえってしまったら,いったい誰が意味のある仕事をしているのか?というと,まだ平社員として有能なメンバーたちが仕事しているというのです.もちろん,人によって無能レベルは違いますから,社長になっても無能レベルに達することなく仕事できる人もいるでしょう.

 

しかし,ピーターの法則に従えば,階層社会に居る限りいずれは無能レベルに到達してしまいます.恐ろしい話ですが,それが必然だというのです.

ピーターの必然”以外の必然”

6〜7割の社員が大学院卒社員が占める会社で働く私(高専卒=短大卒)は,日本は昇格人事などにおいて学歴を重視する傾向がまだまだあるように感じています.たいていの日本企業がそういった古い体質の人事評価システムをいまだに採用しているのではないでしょうか.自分の会社以外を知らないので本当のところはわかりませんが.表向きには”実力主義”などと言いながらも,実情が伴っていないというパターンも往々にしてありそうに思います.

 

私が低学歴のために昇格を遅らされていると文句をいっているわけではありません.日本では,ピーターの法則によって優秀な社員が無能レベルに達するという問題と,そもそも優秀でもない社員が(学歴のおかげ?で)昇格することでさらに無能っぷりを発揮するというもう一つの問題があるように私は思います.

 

高学歴な社員=仕事ができる社員ではないことは,皆さんご存知のことでしょう.もちろん高学歴で優秀な方も大勢いらっしゃいますが.昭和時代から残る粗末な人事評価システムをこの先も続けていたら,日本が無能な人間によって占められるときは欧米諸国よりさらに早く訪れてしまうことでしょう.

 

創造的無能のすすめ

無能レベルに到達せず,有能な仕事人で居続けるためには,無能レベルに達してしまうような昇進をしなければ良いということになります.では昇進を勧められたら断ればいいのか?というと,そう簡単な話ではないようです.せっかくの昇進(昇給)を断るなんてありえないと考える人が多いのですね.昇進を勧められた本人は断ることに何の抵抗も感じていないとしても,その妻や子どもは良く思わないということもありますよね.

 

ではどうすればいいかというと,”無能を演じる”ということを著者はすすめられています.例えば本書では,植物が好きなある庭師は,仕事は誰よりも素晴らしい仕上がりなのに,備品購入時の領収証を度々無くす欠点があるという例が紹介されています.

 

でもこの庭師は,家庭で購入した物品の領収証は必ずとってあるというのです.つまり彼は,昇進せずに現場での仕事を続けたいがために,またそれが自分の能力を発揮できる仕事であることをわきまえているために,わざと領収証をなくしたダメなやつのフリをしているということです.でも素晴らしい仕事をきちんとやっているので,クビにはならないということです.

 

こんなふうに,自分が有能で居続けるために,無能っぷりを発揮することが必要だと,著者は述べています.

 

おわりに

本書は,藤原和博さんの著書本を読む人だけが手にするものの中で紹介されていた1冊です.藤原さんが大学時代に訪れた憧れの先輩の家で本棚に入っていた本だったそうです.藤原さんがこの本に感銘を受け,当時リクルート社のフェローというお立場にあり,様々なところでピーターの法則を引用・紹介していたことで,こうやって私が読んでいる復刻版が出版されたとのことです.なお日本での初版は1969年とのこと.(Wikipediaより)

 

なんと今から45年以上も前にピーターの法則は提唱されていたんですね!私が生まれる15年以上も前です.そんなに昔から知られている法則なのに,いまだに多くの”できない上司”が生まれてくるということは,仕事ができなくてもお金を貰える方が良いと思っている人間の方が多いということでしょうか.

 

確かにお金をたくさん持っていることに越したことはないかもしれません.いつ病気になったり事故にあったりしてお金が必要になるかもわかりませんしね.しかし,ピーターの法則を知ってか知らずか,ただお金だけを優先して自ら能力を発揮できないと分かっているポストに就く道を選んでいるとしたら,かなりの”重症患者”ですね.

 

先日私の先輩が,「人間が発明した最も人間をダメにするモノは,お金だ」と言っていました.ちょうど本書を読み終えた後でしたので,確かにそうかもしれないと思ってしまいました.

最後まで読んでいただきありがとうございました.